集英社の「よみタイ」サイトに、元NASAの科学者による「満月は地震注意？」と題した記事が掲載されたが、それによると「満月の頃には大地震が起きやすい」という言説が決して迷信ではないと語っている。
■満月と地震
この「満月は地震注意？ 改めて注目したい大地震と月との関係」と題した記事は、2024/10/11の集英社『よみタイ』サイトに掲載されたもの。
筆者の佐々木亮氏は、NASA・理化学研究所での研究員を経て、現在は科学系の発信やデータ分析を用いた事業推進を行っている。
ここで筆者は、Natureの姉妹雑誌「Nature Geoscience」に発表された研究を紹介している。
私もよく知っている論文だが、ここでは「大潮」となる満月と新月のタイミングでは巨大地震が発生しやすくなると結論づけている。
この研究では、2016年までの40年間に起きたM5.5以上の地震を対象に、発生時の月齢を調べたところ、M8.2以上の巨大地震12例のうち9例が、「大潮」で発生していたことがわかった。
つまり、12件の巨大地震のうち75%が、満月・新月の時期に起きていた。
■「巨大地震」の場合
だが、M8クラス未満の規模の地震では、同様の相関性が見られなかったという。
過去には、同様に地震と満月・新月の関係について多くの科学的研究がされてきたが、必ずしも肯定的な結果とならなかったのは、「巨大地震」のみに絞り込んで行われなかったためかもしれない。
佐々木氏は更に、「スーパームーン」つまり月が地球に最接近する時期と地震の発生についても言及している。
このような言説が科学者から発せられることはごく稀なことなので、進んでいる人だなと驚いた。
ただし、月の満ち欠けと地震の関係性は、あくまでも「可能性」として示唆される段階であるとも書いている。
気楽に読めるようなエッセイ的な筆致の上での記述ではあるが、私が長年続けてきた研究が少しずつ先が見えてきたような感触を覚えた。
■巨大地震データ
参考までに、過去に発生したM8.0以上の地震と月齢との関係を示すデータを直近10件分載せておく。
凡例：【新】新月、【満】満月、【日】日食、【月】月食、【S】スーパームーン
【-6】2007/01/13 13:23：千島列島東方、M8.2、最大震度3、深さ30km、異常震域
【新】2007/01/19 13:01
【日】2007/09/11 21:32：部分日食
【+1】2007/09/12：スマトラ島北部、M8.4、犠牲者25人、グランドクロス＋ダブルメディエイション
【-1】2010/02/27 15:34：チリ・マウレ地震、M8.8、犠牲者452人、津波。
【S】2010/03/01 01:38：満月
【満】2012/04/07 04:19
【+4】2012/04/11 17:38：インドネシア、北スマトラ沖、M8.6、犠牲者5人。
【-4】2013/02/06 21:25：ソロモン諸島、M8.0、津波1m、犠牲者9人。
【新】2013/02/10 16:20
【-1】2013/05/24 14:44：オホーツク海、M8.3、最大震度3、深さ598km、異常震域
【月】【S】2013/05/25：満月・半影月食
【-4】2015/05/30 20:23：小笠原諸島西方沖、M8.1、最大震度5強、深さ682km。
【満】2015/06/03
【日】【M】2015/09/13 15:41：部分日食・新月
【+4】2015/09/17 07:54：チリ中部（イヤペル地震）、M8.3、深さ22km、津波4.9m、犠牲者5名。
【満】2019/05/19 6:12、満月
【+6】2019/05/26 07:41UTC：ペルー北部、M8.0、犠牲者2人。
【満】2021/02/27：惑星集合7
【近】2021/03/02 14:20：近地点 365421km
【+5】2021/03/04 19:28UTC：ニュージーランド北島沖ケルマデック諸島、M8.1、津波2.6m
このように、巨大地震の多くは満月・新月の前後数日（4日）以内に起きていて、長くても6日前後となっている。
ちなみに、次の満月である10/17はスーパームーンとなり、特別に地震に注意が必要となる。
