最新の気象関連の報道では、ラニーニャ現象の特徴が既に見られるといい、そうなると日本周辺の海面水温が高くなり冬が厳しい寒さになる他、日本周辺で大地震発生頻度が高くなる傾向があることを解説する。
■ラニーニャ現象
まず、気象庁が2024/09/10に公開した「エルニーニョ監視速報(No.384)」を見ると、1ヶ月前のやや古い情報となるが、エルニーニョ/ラニーニャ現象発生確率として、下記の表の通りに予測している。
つまり、10月時点では、これまで平常期だったところが、ラニーニャ現象発生の確率が70%と予測していた。
そして、ここ数日の報道では、既にラニーニャ現象発生の特徴が現れているといったものが目立つ。
そしてラニーニャ現象の発生により、10月は秋雨と台風シーズンが続き、11月には急に寒くなり冬を迎えるという。
■大地震が増える?
私は地震の発生と海洋現象の関係を重視して研究している。
そして、長年の研究から、エルニーニョ/ラニーニャと日本付近、特に海溝型大地震の発生は大いに関係があることがわかってきた。
それはデータ的にも明らかに現れていて、たとえば1919年以降の国内M7.0以上の地震データを解析すると、下記の表のようになる。
つまり、M7.0以上の地震は、エルニーニョ期にはやや少なく、ラニーニャ期にはやや多いという結果となった。
ただし、これも興味深い特徴として発見したが、ラニーニャ期にはM8.0以上の地震は東北地方太平洋沖地震の1件だけで、それ以外は起きていないという傾向がある。
つまり、ラニーニャ期には、日本付近でM7.0以上の地震は増えるが、M8.0以上の巨大地震は、なぜか起きない傾向があるようだ。
また、これは多くの方が経験的にご承知だと思うが、国内で発生するM7クラスの地震は殆ど海溝型(海底が震源)となっている。
■M8.0以上の地震
では、国内で起きるM8.0以上の地震は、エルニーニョ/ラニーニャ/平常期のいずれの期間に多く起きているのだろうか。
集計してみると、以下の通りとなった。
凡例:【エ】エルニーニョ、【ラ】ラニーニャ、【平】平常期
【ラ】1910/04/12:台湾基隆沖、M8.3。
【エ】1911/06/15:喜界島地震 M8.0、犠牲者12人。
【エ】1915/05/01:千島列島沖地震、M8.0。
【平】1918/09/07:千島列島沖地震、M8.2、犠牲者24名。
【平】1920/06/05:台湾花蓮沖、M8.3、犠牲者5人。
【平】1933/03/03:昭和三陸地震(三陸沖)、M8.1、大津波、犠牲者・不明者3064人
【エ】1946/12/21:昭和南海地震、M8.0、犠牲者・行方不明者1,443人
【平】1952/03/04:十勝沖地震、M8.2、津波。
【平】1958/11/07 択捉島沖地震、M8.1、津波。
【エ】1963/10/13:択捉島沖地震、M8.1。津波。
【平】1994/10/04:北海道東方沖地震、M8.2、犠牲者・行方不明者11人。
【平】2003/09/26:十勝沖地震、M8.0。津波。
【エ】2007/01/13:千島列島沖地震、M8.2、津波。
【エ】2015/05/30:小笠原諸島西方沖、M8.1、深さ682km
集計すると、下記の通りとなる。
【エ】07回
【ラ】01回
【平】07回
つまり、前述の通り、やはりM8クラス以上の地震は、なぜかエルニーニョ期に多発して、ラニーニャ期にはほとんど起きないことがわかった。
ちなみに、平常期も7回と多いが、これは全体の50%くらいの地震が平常期に起きているための、当然の偏りとなる。
■ラニーニャ期の注意
気象庁の震度データベース検索で調べると、1919年以降の約100年間で、M8.0以上の地震は11回しか起きていない。
つまり、約10年に1回くらいの頻度でしか起きないことになる。
最後にM8クラスが起きたのは、2015/05/30の小笠原諸島西方沖、M8.1、最大震度5強だったが、発生頻度的にはそろそろ次の巨大地震が起きてもおかしくない時期ということになる。
もっとも、なぜかラニーニャ期には起きない傾向があるので、可能性としてはラニーニャ現象が終わる頃に巨大地震に要注意となるだろうか。
M7クラスの地震については、平均して1.5年に一度くらいの頻度で起きていて、もう2年半ほど起きていない。
また、上記の表にあるように、M7.0以上の地震は黒潮大蛇行期には期待値の0.8の比率と少なく、そういう意味でも黒潮大蛇行が終息した後でまだラニーニャ現象が続いていれば、より可能性が高まるといえそうだ。