10/15の記事の第2弾として、『集英社オンライン』サイトの『熊本地震、北海道地震、能登半島地震…なぜ発生確率の低い地域ばかりで大地震が起こるのか?』と題した記事について私見を書きたい。
■『南海トラフ地震の真実』
この記事は、2024/10/03に『集英社オンライン』サイトに掲載されたもの。
筆者は、これまで「科学ジャーナリスト賞」などの賞を受賞した東京新聞の小沢慧一記者に対するインタビューとなっている。
前回の続きを書こうとして多忙で4日経ってしまったが、前回は08/08の日向灘地震(M7.1、最大震度6弱)の発生後に気象庁が出した「南海トラフ地震臨時情報」について書いた。
この記事の筆者の小沢氏が、「科学的根拠がほとんどないにも関わらず、政府は危機感を煽る情報を出しただけで、その対策やコストを自治体や企業、個人に丸投げしたこと」といったことなどを紹介した。
私も当初からその通りだと感じ、これに同調するような人は地震の素人さんだけだろうと思っていたが、地震から1週間後に、臨時情報は解除された。
■臨時情報後の混乱
08/08の能登半島地震の後で出された「南海トラフ地震臨時情報」で、多くの人々は本当に起きる可能性が高いのだろうと思っただろう。
小沢氏は、この臨時情報で「特に問題だと思われる点は?」と質問されて、こう答えている。
「科学的根拠がほとんどないにも関わらず、政府は危機感を煽る情報を出しただけで、その対策やコストを自治体や企業、個人に丸投げしたことです。だから過剰な対応が生まれた」
ビーチを閉鎖した和歌山県の白浜町では5億円の損害となったり、ホテルや旅館もキャンセルが相次いだ。
野村総研によれば、旅行関連支出への影響は約2000億円に及ぶと試算している。
夏休みの書入れ時にこのような根拠のない臨時情報を出されて、損害賠償を訴えたいところだろう。
■大地震前の発生確率
ここで、大地震発生の可能性の根拠とされる、地震発生確率について考えてみたい。
以下に、近年の国内で起きたいくつかの大きな被害地震の発生前に、地震発生確率がどれだけだったかを見てみる。
◎兵庫県南部地震
地震災害の名称としては「阪神・淡路大震災」
1995/01/17 05:46:兵庫県南部、M7.3、最大震度7、犠牲者・行方不明者6437人
地震前の発生確率:「0.02~8%」
◎熊本地震
2016/04/16 01:25:熊本県熊本地方、M7.3、最大震度7、犠牲者276人
地震前の発生確率:「ほぼ0%から0.9%」
→Aランク(やや高い):30年以内の地震発生確率が0.1~3%
◎能登半島地震
2024/01/01 16:10:石川県能登地方、最大震度7、犠牲者341人
地震前の発生確率:「0.1~3%未満」
■ガクッとくる低さ
このように、日本の災害史に残るような大きな被害地震も、その発生前の確率は、非常に低いものだった。
この程度では、地域住民は皆、うちの地域は当分は大地震は大丈夫だと安心しきってしまうのではないか。
ただし、低い確率だったとしても、一たび巨大地震が起きれば、命に関わるために、防災観点からは無視できない面もあると小沢氏は書いている。
下記の図は、この記事中で紹介されているもの。
地震本部が公開した、「今後30年間に震度6弱以上の揺れに見舞われる確率」と題したもの。
このマップを見ると、上記で紹介した、阪神・淡路大震災、熊本地震、能登半島地震のいずれも、発生確率は非常に低いことを示す色分けだった。
■無理がある発生確率
なぜこうなってしまうのか?
小沢氏によると、数十年から数百年ごとに起きるとされる海溝型地震と、数千年、数万年単位で起きる内陸の活断層型地震を30年という短い期間に当てはめて予測していることに無理があるのだという。
そもそも「30年」というスパンも、理路整然とした根拠があるわけではない。
これ以上書くと長くなるのでやめておくが、詳しくは参照元の集英社の記事を読んでみてください。
たとえばここで、私が住んでいる東京都小平市に最も関係が深い巨大地震として、「立川断層帯」で起きるとされる地震の発生確率を考えてみる。
立川断層帯の位置は、下記マップにある通り。
そして、この断層帯が動いて仮にM7.4の地震が発生した場合の震度分布の予想は以下の通りとなる。
私が住む小平市は黄色くなっていて、震度6弱の揺れが襲うと予測されている。
13年前の東北地方太平洋沖地震の発生時は、私は家に居なかったが、小平市は震度5弱の揺れだった。
立川断層地震では、最低でもそれ以上の震度6弱になると考えられる。
そうなると、この木造2階建ての古い家は損壊する可能性がある。
そういう覚悟が必要となる。
■立川断層帯の例
ここで、例によって、Googleの「生成AI」に質問してみる。
「立川断層で巨大地震が発生する確率は?」
AI による概要
立川断層帯でマグニチュード7.4程度の地震が発生する確率は、30年以内で0.5~2%、50年以内で0.8~4%、100年以内で2~7%とされています。日本の主な活断層の中では「やや高いグループ」に属しています。
立川断層は、東京都武蔵村山市から国立市にかけて北西から南東方向に延びる活断層で、平均活動間隔は1万年~1万5千年程度と推定されています。最新の活動時期は2万年前~1万3千年前と推定されています。
地震が発生する確率は低くても、いつ起こるか分からないため、日ごろの備えをしっかりと行うことが大切です。ご家庭での備蓄やご自宅の耐震化、家族での連絡方法の確認など、さまざまな備えをしておきましょう。
「いつ起こるか分からない」というのが実際のところで、発生前には何かしらの「前兆現象」があるだろうが、それは「科学」の領域というよりも、私が従事しているような「科学より先」の領域となる。
それを受け入れる/入れないは個々の人々次第ということで、このへんで止めておく。