講談社が盛んに宣伝している『首都防衛』(宮地美陽子著)がまた「現代ビジネス」サイトで紹介されたが、今回は「南海トラフ巨大地震が富士山噴火を誘発する」というテーマで、自分も以前から研究しているため、書いてみたい。
■『首都防衛』
講談社といえば、ここ数年は経営状態が芳しくないようで、穿った見方をすれば、それでこれだけ盛んに売り込んでいるのかと考えてしまう。
また、表紙や帯の宣伝文句(?)が凄い。
「知らなかったではすまされない『最悪の被害想定』」
「首都直下地震 富士山噴火 命を守るために何をやるべきか 南海トラフ巨大地震 弾道ミサイル 気象災害」
【目次】は、下記のような構成となっている。
はじめに 最悪のシミュレーション
第1章 首都直下地震の「本当の恐怖」
第2章 南海トラフ巨大地震は想像を超える
第3章 大災害「10の教訓」
第4章 富士山噴火・気象災害・弾道ミサイル
Amazonでは230個ほどの評価で★3.9とまずまずだが、レビューを見ると、人によって良し悪しが分かれるようだ。
■大地震が噴火を誘発
記事を読んでみる。
本書のテーマは、「地震」が「噴火」を誘発するとも考えられる」ということ。
ひと昔前は、地震と火山噴火が相互に影響を受けて発生するなどといえば、地震学者にバカにされたものだった。
だが、現在はそのような主張が普通であるかのように語られる。
この記事でも、たとえば1991/07/16のフィリピン・パギオ大地震(M7.7)の11ヶ月後の1991/04/02に同国のピナトゥボ山が噴火したといった連鎖の例を示している。
たしかに、こういった例は非常に多い。
■地震噴火連鎖例
私はnoteの有料マガジン『地震予知マガジン』で、以下の2つのnoteを公開している。
こちらは、過去の大地震・火山噴火などを時系列に並べ、月齢などの天体配置の観点からまとめている。
『【常時更新】大地震・火山噴火と満月・新月・スーパームーン・日食・月食の関係~データ多数あり』
こちらは、海洋現象の観点から、過去の大地震・噴火がエルニーニョ現象などの海洋現象とどのように関わりがあるかを示している。
『【常時更新】エルニーニョ・ラニーニャ・黒潮など海洋現象と南海トラフなど大地震・火山噴火・水害の関係』
たとえば、1706年に江戸でM5クラスの被害地震(南関東直下地震)が起きた。
その1年後、1707/10/28に宝永地震(南海トラフ全域、M8クラス)、翌日には宝永富士宮地震(M7.0)、そして2ヶ月後に富士山宝永大噴火が起きた。
このような大災害は、多くの場合は「予告」なしには起こらない。
何かしらの「徴」がある。
■南海トラフ→富士山
東京大学の藤井敏嗣名誉教授(山梨県富士山科学研究所所長)は、こう語る。
「南海トラフは富士山の近くを揺らす。富士山がそれまでに噴火をしていなければ、南海トラフ巨大地震が噴火を誘発する可能性は高い」
富士山噴火を誘発するのは、南海トラフに限らない。
15世紀の南関東直下地震である永享相模地震(1433/11/07、M7.0以上)の1年2ヵ月ほど後に、富士山が噴火したように。
私の長年の研究テーマである「大災害シリーズ」の枠組みでは、そのような相関関係がおのずと見えてくる。
今年は正月に能登半島地震で幕を開けたが、【北陸】→【富士山】と続いたこともあった。
繰り返すが、大災害は何の前触れもなく起こるものではない。
「徴」を捉え、「備える」ことが命を無駄にしないためにも重要なこととなるのだ。