元日の能登半島地震の前には、GPS変動による顕著な地殻変動が観測されていたが、報道によれば4年前から能登半島で謎の地殻変動がGPSで記録されていたことがわかった。
このような観測を行うことにより、精度が高い地震予測は可能となるという例を示したい。
■顕著な地殻変動
まず、2024/02/08のTBSの報道から。
これまで「地震予知はできない」と言われながらも、新たな手法で地震の発生予測に果敢に取り組んできたのが、京都大学の西村卓也教授だった。
TBS2022年に取材した時点では、西村氏は能登半島で3cmほどの隆起を確認していたと語っていた。
西村氏は、GPSデータを用いて地殻変動の状態をミリ単位で調べ、断層でどのように「ひずみ」が溜まっているかを調べている。これは、全国1300カ所に設置されている「電子基準点」から送信されるデータによって行われる。
2020年12月頃~2021年11月頃に能登半島で、25年間のGPSデータの中では前例がないような謎の変動が起きていたという。
それは、石川県珠洲市で、3cmも隆起するというものだった。
このような変動は、火山周辺でしか中々見られないものだという。
■次は近畿地方か
その他に、GSPデータ解析により、ひずみがたまっていて警戒が必要な地点として、近畿地方があるという。
近畿地方には「地震の巣」と呼ばれるほど活断層が集まっていて、地盤のひずみが活断層などを動かそうとしている。
海側のプレートが陸側のプレートを引き込み、たまったひずみが解放された時に発生するのが南海トラフ地震。
その発生が近づいている今、特に西日本は活断層などが動くことで起きる「直下型地震」への警戒が必要だと西村氏は語る。
「近畿の地震というのは南海トラフ地震の前50年から、あと10年くらいに増えるという。そういう傾向がありますので。まさにこれからが活動期に入ってきている、そういう状況なんだろうと思います」
南海トラフ巨大地震の発生前には、その前兆として西日本の内陸で大地震が続くと言われている。
昭和東南海地震(1944/12/07)と昭和南海地震(1946/12/21)の前には、下記のような地震が起きていた。
そして、20年ほど前から西日本で、下記マップのような内陸の大規模な地震が起きていた。
いずれの地震も、20年間ほどの後半期に集中していたことも、南海トラフの前触れと思わせるものだ。
そうなると、直近で起きるかどうか別として、前兆としての要素は揃いつつあると考えられるかもしれない。
自説では、現在発生中の黒潮大蛇行が終息した後で、南海トラフ巨大地震発生の可能性が高くなる。
■MEGA地震予測
GPSデータによって地震予測を行っている機関として、村井俊治・東大名誉教授らのJESEAによる「MEGA地震予測」がある。
昨年12/20、12/27に配信されたメールでは、以下のような記述があった。
「警戒エリア」として「北信越地方(富山県、石川県、福井県、長野県、新潟県)を挙げていたが、「ピンポイント予測」を発出するM6クラスレベルではなく、M5クラスの地震の可能性ありとしていた。
ズバリ的中というわけには行かなかったようだ。
■地殻変動情報
私が主催する「探求三昧Web」の固定ページ「リアルタイム地震前兆データ」では、様々な地震前兆関連のデータをリアルタイムで表示している。
ここでは、たとえば「イオノグラム」、「TECマップ」、「地磁気擾乱」、「太陽フレア」、「プロトン現象」といった最新のデータを参照できる。
また、国土地理院による「地殻変動情報表示サイト」も加えている。
私は2022/11/03に「【地震前兆】近く地震が起きそうな地殻変動~国土地理院のデータで東北から沖縄まで調べてみた」と題した記事を書いていた。
ここで、今後どのへんで地震が起きそうかを、国土地理院のGPSデータから予測を行っていた。
ここで、静岡県富士宮あたりで大きな沈降が起きていた。
また、近畿地方では、紀伊半島の吉野熊野国立公園あたりでも沈降が見られていた。
では、その後にこれらの付近で該当する地震が起きていたかというと、下記の地震が発生していた。
2022/11/14 17:08:三重県南東沖、M6.4、最大震度4、深さ362km
ここで、富士宮市と吉野熊野国立公園の上下の地殻変動が、この地震に対応していたかどうかは、震源まで多少距離があるので、検討の余地があるところだ。
だが、海底のGSP値は観測されていないことを考慮すれば、このような海溝型地震で正確な震源の位置を求めるのは困難だろう。
沈降が起きていた2地点の中間あたりが震源になったことは興味深い。
■能登半島地震の前兆
では、元日の能登半島地震の前兆の地殻変動は、GSPデータに現れていただろうか。
2023/12/13~2024/01/13の期間で、下記のような設定でデータを求めてみた。
・変動情報:変動ベクトル図
・期間:1ヶ月
・表示形式:垂直方向
その結果は下記マップの通り。
だたし、これは能登半島地震の発生後の地殻変動も含まれるため、珠洲市あたりから大きな上下の変動があっても、当然だということになる。
国土地理院のサイトでは、能登半島地震の前後の地殻変動マップを「暫定版」として公開している。
これを見ると、水平の地殻変動は下記マップのような値を示していた。
ただし、これは暫定版であり、GPS変動の観測期間が明記されていないので、判断が難しい。
■顕著な地殻変動があった
国土地理院が毎月公開している地殻変動情報で、能登半島地震発生前に公開の「令和5年12月の地殻変動」の「関東・中部地方」のデータを見ると、下記のようになっている。
震源の赤丸は私が書き入れたものだが、これを見ると、能登半島の先端の震源あたりで顕著な地殻変動が起きていたことがわかる。
このように、地震発生前に大きな地殻変動が見られる場合は、その周辺で大きな地震に注意することはできるだろう。
私は年末年始から多忙により、このような観察ができなかったことが悔やまれる。
今後は、少しでも気になる事象があれば、観察することにしたい。