5万6千人以上の犠牲者を出したトルコ・シリア地震から今日で1年経ったが、地震発生当時に、トルコあたりで大きな地震があると、長期的に東方の日本などにも大地震が連鎖することがあると警告したが、実際はどうだったかを検証してみる。
■トルコ・シリア地震
1年前の今日、トルコ南部で発生した地震の詳細は以下の通り。
【地震情報】
USGS Significant Earthquakes, Past Day
Time
2023-02-06 01:17:36 UTC
2023-02-06 01:17:36 UTC at epicenter
2023/02/06 10:17日本時間
Location
37.201°N 37.000°E
Depth
24.08 km (14.96 mi)
犠牲者は、トルコで約5万人、シリアで約6千人以上で計5万6千人以上となっている。
■被災者数など
トルコとシリアの国土の面積は、併せて100万平米ほど。
日本の3倍ほどあるが、日本でこれだけ多くの犠牲者が出た大地震は、面積で比較すると東日本大震災の2万人弱に匹敵することになる。
世界保健機関(WHO)による推計では、最大2,300万人が被災したと見られる。
トルコの人口が約8500万人、シリアが2100万人で、計1千万人の人口のうちの4人に1人が被災したことになる。
日本の人口が1億2千万人以上で、日本で同等の被害が出る大震災が発生したと推定すれば、3千万人以上が被災することになる。
これは、東京都の人口の2倍以上にあたる。
もっとも、後述する建物の耐震性などの違いがあるため、たとえ首都直下地震でも、これほど甚大な被害にはならないと思われる。
■追悼ムード一色ではなく…
今日は地震から1周年ということで、追悼の催しが行われたようだが、追悼ムード一色というわけではなかった。
今日の報道では、家を失くした被災者の間で、政府の対応で支援の遅れなどに不満も出ていて、警官隊と小競り合いとなったりもしている。
日本と同様の地震大国であるトルコでは、日本と同じ程度の耐震基準がある。
だが、被害がこれほど大きくなった背景には、違法建築や手抜き工事の横行があるともいわれる。
地震発生後、200人以上の業者が違法建築に関与したために逮捕された。
無許可の建物は、国内で2100万棟の建物の半数以上に上り、放置状態になっている。
■抗議運動
そして、今も69万人が仮設住宅で生活している。
首都直下地震が発生すれば、東京都民として「明日は我が身か」の想いがある。
下記のような建物の倒壊は能登半島地震でも見られたが、この場合は地下の流体などによる地盤の問題もあった。
トルコ・シリアでは、それ以前の問題として、上記のような違法建築を許していた背景があり、抗議運動が起こるわけだ。
■東方への地震連鎖
1年前の地震が発生した日のブログ記事で、過去にトルコあたりで大地震が起きると、その東方のイラク・イランあるいは日本周辺にまで大地震が連鎖することがあるとして、実例を示した。
それを、ここでも載せておく。
※発生時刻はUTC
・1855/02/28:トルコ・ブルサ地震、M6.7、犠牲者1万6千人
→1855/03/18:飛騨地震、M6.7、犠牲者203人以上
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・1943/11/26 22:20:トルコ中部、M7.5、犠牲者約4千人
・1944/02/01 03:22:トルコ中部、M7.6、犠牲者3959人
・1944/10/06 04:34:トルコ西部・アイワルク、M6.8、犠牲者30人
→1944/12/07 13:36:昭和東南海地震、M7.9、犠牲者・行方不明者1,223人
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・1949/07/23 15:03UTC:トルコ西部、M7.2、
→1949/12/26 08:24:今市地震、M6.4、最大震度6、犠牲者10人
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・2003/05/01:東トルコ地震、M6.4、犠牲者177人
→2003/05/26 18:24:宮城県沖地震、M7.1、最大震度6弱、負傷者174人
ここで、特に象徴的なのは、1943年の数千人の犠牲者が出た一連のトルコの地震の翌年に、南海トラフ(東南海地震)が動いたことだ。
このような地震連鎖が起きるのは、一つとしてはユーラシアプレートの活動があるのかもしれない。
トルコが乗っているアナトリアプレート、ユーラシアプレート、そして西日本が乗っているアムールプレートが相互に刺激し合って、連鎖が起こるのではないか。
このあたりは、元SEあるあるで理屈よりも経験重視ということで探求していて、詰めは今後の課題としたい。
■地震連鎖はあったか?
次に、昨年のトルコ・シリア地震の後で、「東方」で実際にどのような地震・火山噴火が起きていたかを、以下にまとめる。
海洋現象は、あくまでも参考程度に記しておく。
凡例:【ラ】ラニーニャ現象、【エ】エルニーニョ現象
【ラ】2021年秋~2023年冬(2月)
2023/02/06:トルコ・シリア地震、M7.8、犠牲者56000人超
---【ラ】---
2023/03/28:青森県東方沖、M6.2、最大震度4
【エ】スーパーエルニーニョ:2023年春(5月)~2024年4月?(xヵ月間)
2023/05/05:石川県能登地方、M6.5、最大震度6強、犠牲者1人
【南関東】2023/05/26:千葉県東方沖、M6.2、最大震度5弱
【噴火】2023/06/11:フィリピン・マヨン山
2023/06/28:日本海北部、M6.3、最大震度3
2023/08/28:インドネシア、バリ海、M7.1
2023/10/04:西之島噴火、噴煙1500m
2023/10/05:鳥島近海、M6.6、無感、深さ10km、津波30cm
2023/10/07:アフガニスタン西部、M6.3、深さ14km、犠牲者2千人以上
2023/10/09:鳥島近海、M不明、無感、ごく浅い、津波60cm
2023/12/02:フィリピン・ミンダナオ島沖、M7.6、津波60cm
2023/12/03:インドネシア・スマトラ島マラピ山噴火、噴煙1万5千m、犠牲者23人
2024/01/01:能登半島地震、M7.6、最大震度7、犠牲者168人。
以上のうち、主な地震の震源を下記マップで示す。
USGSの検索で、トルコ・シリア地震以降1年間に大陸周辺で起きたM6.0以上の地震を検索すると、44件となった。
このように、トルコ・シリア地震から3ヵ月後に能登半島でM6.6の地震が起きたが、その後の元日の能登半島地震も、長い目で見てトルコ・シリア地震の影響も一部にあったのかもしれない。
■比較対象として
上記の44件が多いか少ないかという判断の基準として、トルコ・シリア地震以前の1年間に起きた地震を同じ条件で検索すると、25件あった。
この1年間では数が多くなっているだけでなく、ユーラシア大陸上や日本周辺で、大きな被害を伴う地震が目立っていたようだ。
もっとも、この数の違いは、トルコの地震の影響だけではないかもしれない。
たとえば、厳密にいえば、太陽黒点数の11年周期の問題もある。
そのあたりも検討対象に含めて、今後再度見直しを行いたい。