地震発生の前に大気ラドンガスの濃度が変化することが科学的にわかっているが、能登半島地震の前の前に300km離れたうちのラドン測定器の値にも変化が表れていた。
このため、自宅などで常時ラドン濃度を測定していれば、時には自分や周囲の人々の命が助かることもあるだろう。
■ラドンガスとは
まず、ラドンとは何かというと、地下に広く存在するラジウムという放射性元素がアルファ壊変することによって発生する放射性の希ガスのこと。
気体であり、地中から地上に出て家屋の中にも入り込む。
だが、日本のように木造の住居などより密封性の高い欧米の住宅ではラドンによる被ばく線量が高くなり、健康被害が問題視される。
屋内ラドン濃度の世界平均は、1立方メートル当たり39ベクレルであるところ、日本の平均値は16ベクレルとなっている。
■地震前のラドン濃度の変化
地震発生の前に大気ラドン濃度に変化があることは、科学の世界で認められている。
認められているというのが強すぎるならば、世界で研究が進められていて、地震との関係がわかってきつつある。
たとえば、1995/01/17に発生した兵庫県南部地震(M7.3、最大震度7、犠牲者・行方不明者6,437人)の前にも、大気ラドン濃度の異常な上昇・下降が計測されていた。
それは、地震発生前から定期的に大気中のラドン濃度を測定していた神戸薬科大学で確認された。
その他にも、下記のような地震の発生前に大気ラドン濃度の変化が観測されていた。
1966/04/26 23:22:タシケント地震(ロシア)、M5.0、犠牲者10人
1925/05/23 11:11:北但馬地震、M7.3、最大震度6、犠牲者2925人
1944/12/07 13:36:東南海地震、M7.9、最大震度7相当、犠牲者・行方不明者1,223人
2016/06/18 07:58:大阪府北部地震、M6.1、最大震度6弱、犠牲者6人
■ラドン濃度測定器
私自身は、2019年5月に初代の大気ラドン濃度測定器「PRO3」を購入した。
2022年4月には、同社の最新機種のPRO4を購入して、両器を併用している。
PRO4の方はAmazonで27000円位で購入した。
一時期は価格が急騰したが、いまAmazonで見てみると、別業者の販売で、最安値が26000円(送料別)がある。
他の出品者のものは4万円以上するので、なぜこんなに安いのかわからないが、特に問題なければ今が買い時かもしれない。
Amazonで「ラドンガス測定器」で検索すると、より安い製品が様々なメーカーから出ているが、地震予測用途で利用できるかどうかは不明だ。
そもそも、なぜこんなにラドンガス測定器の種類が多いのかというと、それは米国ではラドンガス濃度が非常に深刻な問題となっているためだ。
ラドンは天然に存在するガスで、非喫煙者の肺癌の主因となっている。
米国では毎年約2万1000人がラドンによる肺癌で亡くなっているというから驚く。
日本では問題にならない濃度だが、米国では地下の土壌、岩石、水に含まれるウラン元素の崩壊で生成され、家の基礎の裂け目、配水管等の開口部から屋内に侵入するという。
■測定値の記録
ラドン測定器の値は、機器内に履歴が残るわけではないので、たとえば毎時の値を測定したい場合は、たとえ私のように自宅で仕事をしている人間でも無理がある。
推奨される設置環境は、ラドンの量が多い地下とされるが、うちにはないので1階の玄関に設置している。
2階で作業していて、毎時アラーム時計が鳴るようにして、その度に1階に降りて測定値をメモする。
この手順では長続きしないだろう。
このため、解決策として必要となるのが、Wi-Fiカメラだ。
私はTAPOというメーカーのWi-Fiカメラをラドン測定器と気象計の前に設置して、常時撮影している。
撮影した動画は、内部記憶媒体に記録される。
それを、TAPOの機能を使って2階のPCからカメラにアクセスし、毎時の値をExcelに記録する。
ここには、気象計の屋内・屋外温度・湿度、ばけたん点滅、地震情報などを記していく。
ばけたんは、PCモニターの前に6個ほど設置していて、点滅があったらExcelに記録する。
このため、離席している間は、ばけたんの記録はできない。
■能登半島地震の前兆
結果として、下記のようなデータとなる。
能登半島地震が発生した01/01の1日の記録だ。
ここで「PRO4」の列と「PRO3」の列がラドン濃度で、うちメインは最新のPRO4の方になる。
この値が、02時台~07時台に最低値となり、10時台~12時台が27と最高値となった。
その後に25→24→23→22と下降していき、16:10にここ小平市もゆっくり揺れて、能登半島地震が発生した。
旧機のPRO3の方は、04時台~11時台が40と最高値で、その後に14時台に36の最低値に達し、その後に38まで再上昇してから地震となった。
このように、さすがにM7.6の規模でも、震源から300kmほど離れた小平市でも大気ラドン濃度の変化が捉えられていた。
■国が行うべき
大気ラドン濃度は、通常は地震発生前に急上昇していき、ピークから下降に転じた後で地震発生となる。
もちろん、より震源から近場でラドン濃度が測定されていたならば、もっと上昇・下降が激しい値となっていただろう。
他の前兆現象と同様に、その値の変化は相対的なものとなる。
能登半島地震の前のラドン濃度は、ネット上では見当たらないが、今後どこかの研究機関で測定結果が発表されるかもしれない。
本来は1日の最後に上記のような表をブログで公開すれば良いが、年中多忙のために中々実行できない。
今後は、上下の変化が激しい時だけでも、ブログで公開するようにしたい。
ラドン濃度観測などは、各地の気象観測所に機器を設置して毎時の測定値を公開すれば良いだけで、予算的にも困難なことは無いと思われる。
日本のような地震大国では、「地震予知は不可能」などと科学者が言い訳めいたことばかり言っていないで、とにかくできる限りのことはやろうと、政府の尻を叩いて始めるべきなのだ。