昨日の記事の続きで、今日09/19に『現代ビジネス』掲載の『「最大34メートルの津波」「東日本大震災の14.5倍の犠牲者」…「南海トラフ巨大地震」の「驚愕の被害想定」』と題した記事の内容に沿って、南海トラフで巨大地震が起きる可能性を考えてみる。
■南海トラフ巨大地震
この『現代ビジネス』の連載記事の2回目は、昨日の記事で紹介した通りで、『「南海トラフ巨大地震」はいったいいつ起こるのか…その具体的な予測の「数字」』と題したものだった。
これに続いて、今日は3回目で、『「最大34メートルの津波」「東日本大震災の14.5倍の犠牲者」…「南海トラフ巨大地震」の「驚愕の被害想定」』と題した記事となっている。
だが、南海トラフ巨大地震は「いつ起こるのか」というテーマの続きと思っていたが、どうもそうではなかった。
ここでは、阪神・淡路大震災、東日本大震災などの被害の比較などについて書かれている。
そこで今日は、上記の『現代ビジネス』の記事は別途読んでもらうことにして、南海トラフ巨大地震の発生時期に関する続きを書くことにする。
■黒潮大蛇行
黒潮大蛇行の最新の予測については、昨日の記事で書いた通りで、まだ当分(少なくとも11月中旬まで)は終息せずに続きそうだ。
この記事を読みに来る読者が最も関心を抱いていることの一つは、聞くまでもなく、私の自説である「南海トラフ巨大地震は黒潮の非大蛇行期に発生する」に、どのくらい根拠があるのかということだろう。
ちょうどというか、昨日から黒潮大蛇行の渦の周辺でM4クラス以上の地震が3回ほど起きていたので、それを例に解説する。
まず、19:30時点で、過去24時間以内に国内でM5クラスの地震が3回も起きていた。
地震に詳しい人は、2回ではないのかと疑問をもたれるだろう。
だが、下記マップで青字で示しているが、1つは無感地震だった。
このように、フィリピン海プレート上で、M4クラス以上の無感地震が3回起きていた。
これらがちょうど黒潮大蛇行の渦の周辺が震源となっていた。
■大蛇行の周辺で起きていた地震
上記の地震の震源と、黒潮大蛇行の渦の位置関係を示すために、「earth」サイトの海流図に上記の地震の震源をプロットした。
これらの地震を、発生時間順に見ていく。
行末の数値は深さを示す。
(1) 09/18 20:31:鳥島近海、M4.5、444km
大蛇行の渦の南端あたりが震源だが、震源の深さが444kmと深い。
これまでの研究でわかったのは、深さ100km以上の深発地震は、黒潮大蛇行の影響を受けずに、大蛇行期でも非大蛇行期でも関係なく発生するということ。
この説を最初に提唱した元気象庁・岡田正実氏も、このことに気づいていたかどうかは不明で、私はその記述を岡田氏の論文で目にしたことがない。
(2) 09/19 05:32:東海道西方沖、M4.1、297km
これは大蛇行の渦の中または境界付近が震源となっていたが、(1)と同様に深さ297kmと深発地震だったので、大蛇行期に起きても自説と矛盾しない。
(3) 09/19 15:22:鳥島近海、M5.8、10km
この3つのうち唯一、深さ10kmと震源が浅い地震だった。
だが、大蛇行の渦からかなり遠いところが震源となったために、大蛇行の影響を受けなかったと考えられる。
■浅発地震は起きない
このように、黒潮大蛇行の発生中は、基本的に渦の中では深さ100km以下の浅発地震は発生しない。
では問題の南海トラフ巨大地震はどうかというと、想定されている震源の深さは、約10km~40km程度とされている。
上記マップでピンクのラインで示したのが南海トラフだが、黒潮大蛇行の渦はちょうどそこに被るように起きる。
下記マップでは、1944/12/07の昭和東南海地震(M7.9)と1946/12/21の昭和南海地震(M8.0)の震源を示している。
つまり、南海トラフ上で発生する巨大地震は、深さ数十キロの浅い震源であり、黒潮大蛇行の発生中はこのような浅発地震は発生が抑制されることになる。
では、もっと東の地点が震源となる東海地震はどうだろうか。
同様に、黒潮大蛇行によって抑制されるだろうか。
これについては、大蛇行の渦がどれだけ大きくなるかと、震源がどのあたりになるかによって変わってくる。
何分、最後の東海地震は1854/12/23の安政東海地震で、この頃は黒潮大蛇行の存在は推定されていたが、正確な渦の位置などは知る術もない。
だが、この1854年には同年2月にペリー来航時に黒潮大蛇行が観測されていて、その存在はわかっていた。
問題は、その年のいつ大蛇行が終了したかだが、安政東海地震が発生した12月23日には終了していた可能性が高いだろう。
そうだとすれば、黒潮大蛇行が終了した直後に東海地震と東南海地震が続けて起きたことになり、自説と矛盾しないことになる。
問題の、「南海トラフ巨大地震はいつ起こるか」については、JAMSTECの長期予報にあるように、少なくとも11月中旬までは大蛇行が続くようで、今年中は南海トラフ巨大地震が発生する可能性が低いといえるだろう。
岡田氏と私の説が正しいとして、大蛇行があまり長期間続いても問題があるかもしれない。
地下で歪みが溜まっていけば、それだけ次の地震が巨大化しないだろうかと思えてくるのだ。
■フィリピン海プレート
09/08にトカラ列島近海で群発地震が始まった時に、今後はフィリピン海プレートを含む西日本で大きな地震に注意と書いた。
そして昨夜の宮古島北西沖M6.4やこの記事で紹介したフィリピン海プレート上の地震も含めて、やはり想定していたエリアで地震が起き始めた。
※コミック『南海トラフ巨大地震 1』(よしづき くみち、biki、講談社)、08/30に発売以来、すでに重版となって話題になっているようだ。