09/17の『現代ビジネス』サイトに『「南海トラフ巨大地震」はいったいいつ起こるのか…その具体的な予測の「数字」』と題した記事が掲載され、専門家が発生時期に関する考察を行っているが、それに関連して私も独自の研究に基づいて意見を書くことにしたい。
■いつ起きるか?
まず、09/17の現代ビジネスの記事『「南海トラフ巨大地震」はいったいいつ起こるのか…その具体的な予測の「数字」』は下記のところにある。
ここでは、防災・危機管理アドバイザーの山村武彦氏が記事を執筆している。
最近講談社は、自社の出版物のPRを兼ねた記事が目立ち、これもその関連のようだ。
具体的には、コミック『南海トラフ巨大地震 1』の発売に併せて書かれている節がある。
記事の執筆者は防災の専門家であるが地震学者ではなく、記事の内容は防災観点から見た南海トラフ巨大地震の危機管理が中心となる。
だが、この冒頭では「幅がある発生周期」とあり、「いつ頃起きるのか」というところから関心を持たせようとしている。
政府の地震調査委員会が2023年1月に発表した発生確率は、以下の通り。
M8~M9級の地震が10年以内に30%程度、20年以内で60%程度、30年以内で70~80%程度、50年以内では90%またはそれ以上としている。
だが、このような試算は机の上で考え出したものであり、SE歴25年の人間としては、鵜呑みにはできない。
こうした大地震の発生確率が、過去にあまりアテにならなかったことは、日本の大地震の歴史を通じて明らかだ。
■切迫性あり?
同記事にあるように、気象庁のWebサイトでは、「南海トラフ地震は概ね100~150年間隔で繰り返し発生しており、前回の南海トラフ地震(昭和東南海地震《1944年》及び昭和南海地震《1946年》)から70年以上が経過した現在では、次の南海トラフ地震発生の切迫性が高まってきている」とある。
穿った見方では、いつものように、たとえば来年起きたとして、「やっぱり言っていた通りに起きてしまいましたね」と言えるように予防線を張っている?
この記事では、「南海トラフで大規模地震が発生する可能性が高まっている」という認識は専門家間でも概ね一致しているとあるが、実際にそのような心構えでいるべきだろう。
山村氏は、こう書く。
「南海トラフ巨大地震発生は30年後かもしれなし、今日か明日かもしれない。ただ、ずっと先だと思ってしまえば対策や準備がおろそかになってしまう。年に1度でもいいので、今夜か明日大地震が起きると思って家具類の整理整頓・固定・転倒防止対、ガラス飛散防止フィルム貼付、防災備蓄の再確認を真剣にしてほしいものである。」
そして記事は次回に続くとなっている。
こちらの記事も、その続きの記事を読んでから続けることにしたい。
■黒潮大蛇行
だが、ここで終わっては読者は物足りないだろうから、自説を手短に付記しておく。
南海トラフ巨大地震の発生時期は、他の大地震と異なり顕著な「季節性」があることに気づき、更に研究を進めたところ、南海を流れる「黒潮」の動きに左右されるらしいことがわかった。
このあたりのメカニズムなど詳しい解説は、今まで散々書いてきたので省くとして、では現在の黒潮の状況はどうかと、JAMSTECの『黒潮親潮ウォッチ』の最新の長期予測を見てみる。↓
2023年11月15日までの黒潮「長期」予測(2023年9月13日発表)
2023/09/13発表の記事を見ると、相変わらず黒潮大蛇行は続くとの予測となっている。
ただし、11/15頃には大蛇行の渦が下記の図のようにちぎれる可能性があるという。
実際に千切れるかどうかはわからないとしていて、だが実際にちぎれたとしても、2020年後半の時のように、大蛇行が終了したわけではなく、その後に復活して続いた。
だが、自説では大蛇行の渦の力が弱くなれば、大地震を抑制する力(実際は潮位の影響)が衰えることが予測される。
そして実際、上記のちぎれた時期には、「それなり」の地震が起きていた。
この記事の続きは、明日以降、現代ビジネスの記事の続編に併せて書くことにしたい。
※コミック『南海トラフ巨大地震 1』(よしづき くみち、biki、講談社)、08/30に発売以来、すでに重版となって話題になっているようだ。