4/5にSBS(静岡新聞社・静岡放送)のニュースで、「首都直下地震」や「南海トラフ巨大地震」にどう備えるのかと題した記事が掲載されていて、そこで専門家が過去の南海トラフ巨大地震は起こり方がバラバラで予測が付けにくいといったことを語っているが、私の研究では必ずしもそうとは限らないことを解説する。
■南海トラフ
取り上げるニュース記事は、『「過去9回起こり方はバラバラ 南海トラフも…」第一人者が警鐘鳴らす「心の油断」【わたしの防災】』と題したもの。
ここで、関西大学 社会安全研究センター長 河田惠昭特任教授が、こう語る。
「過去9回、マグニチュード8以上の南海トラフ巨大地震では9回とも起こり方がバラバラ。次も過去のパターンでは起こらないと考えなければいけない」
ここから読み取るニュアンスとしては、次の南海トラフ巨大地震はいつどのような形で起こるか皆目見当がつかないといったところだ。
だが、元気象庁の岡田正実氏や私のこれまでの研究では、南海トラフで発生する巨大地震は、「海洋現象」と大いに関わりがある。
もっといえば、黒潮が南海で大きく南へ蛇行する「黒潮大蛇行」の状況と関係している。
そのことは、つい昨日の記事でも詳細に書いているので省略する。
要は、現在発生中の黒潮大蛇行が続行する限りは、南海トラフで巨大地震の発生が「抑制」されるという仮説だ。
■エルニーニョ
さらに、海洋現象について語るならば、過去の15世紀以降の6回の南海トラフ巨大地震のうち、3回がエルニーニョ現象の発生中に起きていたこと。
また、ラニーニャ現象の発生中には全く起きていなかった。
それ以前の地震の発生時には、エルニーニョ・ラニーニャ現象の存在がわかっていなかったので、不明となる。
■発生の季節性
他には、過去の南海トラフ巨大地震は、すべて7月~翌2月に起きていたという事実。
これは、他の日本の大地震ではこれほど顕著に見られない「発生の季節性」といえるだろう。
以上のことが「たまたま」そうなったのではないとすれば、今後たとえば黒潮大蛇行が今年後半に消滅して、更に夏に起きる可能性が高くなるというエルニーニョ現象が発生すれば、巨大地震発生の可能性が高くなると考えた方が良いだろう。
つい先日も某メディアに取材されて語ったのだが、地震のことを研究される科学者諸氏の多くは、海洋現象に詳しくなく、またそのような分野が地震学の研究にとって重要とは考えられていない。
今後もっと学際的な交流が行われて、先入観を持たずに様々な分野の要素を取り入れて大地震の発生を検討される科学者が増えることを期待したいものだ。
※仙台で震災にあった当時16歳の少年、羽生結弦は、何を思い、感じ、そして被災地の人々とどのように向き合ってきたのか。
南海トラフなどで津波の被害が想定されている地域に住む方々は、3.11の経験者から学ぶことが多いだろう。
というか、学びがなければ話にならない。