気象庁の最新の予報によると、この夏にかけてエルニーニョ現象が発生する可能性が高く、そうなると冷夏や長い梅雨となる恐れがあるが、私のこれまでの研究では南海トラフ巨大地震を含めた大地震の発生の傾向もあるので、概要を紹介する。
■エルニーニョ現象発生か
気象庁が2023/04/10に発表した最新版の「エルニーニョ監視速報」では、概要が以下のようになっている。
・現在はエルニーニョ現象もラニーニャ現象も発生していない平常の状態になっている。
・今後、夏にかけて平常の状態が続く可能性もある(40%)が、エルニーニョ現象が発生する可能性の方がより高い(60%)。
エルニーニョ現象とは、南米ペルー沖の「エルニーニョ監視海域」の海面水温が平均値より上昇することが続く現象。
逆にラニーニャ現象は、平均値より下降する。
2021年秋~2023年冬には、ラニーニャ現象が発生していた。
この時は、上記の図のように、東日本などで海面水温が高くなる傾向がある。
■気象への影響
一般に、エルニーニョ現象の発生中は、日本周辺では梅雨が長く続き、夏季に気温が低くなる傾向がある。
ただし、下記ニュースで気象予報士が語るように、ベースの気温が年々上がっているため、夏は過ごしやすくなるだろうと楽観視はできないという。
また、台風の発生数は少なくなる傾向があるが、日本に上陸する可能性はそう低くならないかもしれないようだ。
■エルニーニョ期の大地震
日本で起きる大地震では、エルニーニョ・ラニーニャ現象の発生状況による偏りはあるだろうか。
1919年以降の約120年間に日本で起きたM6.5以上の地震を集計すると、エルニーニョ期に発生した地震は、期待値より「やや少ない」、ラニーニャ期では「やや多い」という結果となった。
ただし、これは太平洋側・日本海側・内陸などの震源をすべて含めた集計であり、この結果をそのまま鵜呑みにはできない。
ただし、東日本、西日本、海溝型、規模などの枠組みで絞っても、大体同じような結果となる。
やはり、私がこれまで研究してきた結果として、海洋現象と大地震の発生は関係があるという結果がデータから現れている。
このあたりのことは、Amazon Kindleの拙著シリーズ『大地震は海洋現象で予測できる』で詳しく解説している。
■南海トラフ巨大地震
過去にエルニーニョ・ラニーニャ現象の存在がわかった16世紀以降に起きた南海トラフ巨大地震は、計6回あった。
そのうち、エルニーニョ・ラニーニャ・通常期で偶然で起きる「期待値」からの偏りを見ると、以下のようになる。
・エルニーニョ期: 3回 →30%中50%→多い
・ラニーニャ期 : 0回 →35%中0%→少ない
・通常期 : 3回 →35%中50%→多い
つまり、エルニーニョ期は期待値が30%のところを50%起きていて、多い。
ラニーニャ期は0回と、極端に少ない。
通常期も、期待値35%中で実際は50%と、多いという結果となった。
これが偶然による偏りでないとすれば、今夏にエルニーニョ現象が発生すれば、南海トラフ巨大地震が発生する可能性が高くなると考えられる。
自説では黒潮大蛇行が消滅すれば南海トラフ巨大地震の発生可能性が高まる。
その事態が加われば、二重の意味で南海トラフ巨大地震の発生に警戒が必要となるだろう。