2016年4月16に発生した熊本地震から7年が経とうとしているのを機に、この大地震の前に起きていた前兆現象や予兆・予測などを連載の形でまとめてみることにする。
今日の第1回目は、熊本地震の前に世界でどんな地震や気象現象が見られたかということと、大地震の前に震源周辺で「空白域」ができていたかどうかを調べてみた。
■熊本地震
7年前の熊本地震の発生時にまだ生まれていなかったという人は、このブログを読んでいないだろうが、念のため概要を書いておく。
2016/04/14 21:26、熊本県熊本地方でM6.5、最大震度7の地震が発生した。
この地震によって大きな被害が出たが、これはまだ本震ではなく前震だということがわかったのは、2日後に本震が起きてからだった。
2016/04/16 01:25:熊本地震(本震)、M7.3、最大震度7、深さ12km
この前震と本震によって、273人の犠牲者が出たほか、負傷者約2800人、避難者約18万人の人的被害が発生した。
建物の被害は、住宅の全壊が約8,600棟、半壊が約34000棟、一部破損が約163000棟などの数となった。
その後7年間で国内で起きた地震で、犠牲者数が熊本地震を超える地震はまだ発生していない。
その日に書いたブログを見ると、ここ小平市も揺れたようだ。
地震は深夜1:25に起きたが、私はまだ起きていたようで、記録は震度1だった。
それほど遠方の大地震だとは思わず、直後のニュースで熊本地方だと知った。
■地震連鎖
まず、熊本地震が起きた年の初め頃から起きていた気象現象や地震・噴火を並べてみる。
凡例:【エ】エルニーニョ
【エ】2014年夏~2016年春(3/10以降、1.8年間)
【暖冬】2015年冬~2016年
【豪雪】2016年01月:平成28年豪雪(西日本豪雪)
2016/02/06:台湾・高雄、2016年台湾南部地震、M6.4、深さ16.7km。犠牲者114人。
2016/03/02:スマトラ島北部西沖、M7.8
【噴火】2016/03/27:パブロフ山、アリューシャン列島。
2016/03/20:カムチャツカ半島東沖、M6.4
2016/04/07:バヌアツ諸島、M6.7
2016/04/10:アフガニスタン、M6.6
2016/04/13:ミャンマー北西部、M6.9
2016/04/13:フィリピン南部沖、M6.0
2016/04/14:熊本地震(前震)、M6.5、最大震度7
2016/04/16:熊本地震(本震)、M7.3、最大震度7、犠牲者273人。
2016/04/16 23:58UTC:エクアドル沿岸部、Mw7.8、犠牲者661人。
熊本地震と同日にエクアドルでM7.8の被害地震が起きていたが、時間的には熊本地震の方が早かった。
環太平洋の反対側で同時期に大地震が起きることは、よく見られることだ。
■エルニーニョ・ラニーニャ
また、熊本地震はエルニーニョ現象がその年の春に終息する間際に起きていた。
このように、エルニーニョ・ラニーニャ現象の終息の間際に世界で大きな地震が起きる例は多い。
今までそう漠然と考えていたが、これを機にその例を洗い出してみた。
【エ】1891年(1年間)
1891年10月28日:濃尾地震、M8.0、犠牲者・行方不明者7,273人、根尾谷断層。
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【ラ】1906年夏~1907年夏
1907年06月25日:スマトラ島北部沖、M7.9、犠牲者400人。
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【エ】1914春~1915春(1年間)
1915年5月1日:千島列島沖地震、M8.0。
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【ラ】1928年夏~1930春(2年間)
1930/05/07:トルコ・ハッキャリ、M7.2-7.5、犠牲者2514人
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【ラ】1938春~1939春(1.2年)
1939/05/01 15:00:男鹿地震(秋田県沖)、M6.7、最大震度5、犠牲者27人。
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【エ】1941春~1942春(1年間)
1942年5月14日:ペルー・エクアドル沖、M7.9、犠牲者200人。
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【ラ】1942春~1943秋(1.5年)
1943/11/26:トルコ中部、M7.6、犠牲者4,000人。
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【エ】1946年春~1947年春(1年間)
1947年4月14日:択捉島南東沖、M7.1。
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【ラ】1949年夏~1950年夏(1.2年)
1950年8月15日:アッサム- チベット、Mw8.6、犠牲者4,000人
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【ラ】1964年春~1964/65年冬(0.8年)
1965年2月3日 アリューシャン地震、M8.2。
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【ラ】1967年夏~1968年春(1年)
1968年5月16日:十勝沖地震、Mw8.3、犠牲者・行方不明者52人、津波。
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【エ】1968年秋~1969/70年冬(1.4年間)
1970年1月4日:雲南省、通海地震、M7.5、犠牲者1万6,000人。
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【エ】1972年春~1973年春(1.2年間)
1973年05月30日:西之島の東南方600mで海底噴火、新島誕生。
【ラ】1973年夏~1974年春(1年)
1974年5月10日:四川省、大関地震、M7.1、犠牲者1,400人。
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【ラ】1995年夏~1995/96年冬(0.7年)
1996年2月17日:ニューギニア島沖地震・津波、Mw8.2、犠牲者・行方不明者165人。
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【ラ】2005年秋~2006年春 (0.5年)
2006年5月27日:ジャワ島中部地震、Mw6.2、犠牲者5,000人以上。
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【エ】2006年夏~2007年春(1年間)
2007年3月25日:能登半島地震、M6.9、犠牲者1人、津波。
2007年4月2日:ソロモン諸島、M8.0。
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【ラ】2007年夏~2008年春(1年間)
2008/05/15~22:インドネシア・スメル山噴火
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【ラ】2010年夏~2011年5月中旬(0.8年間)
【三陸】2011年03月11日:東北地方太平洋沖地震、Mw9.1、犠牲者・行方不明者約2万2000人。
2011/05/13:インドネシア・スメル山噴火。
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【エ】2014年夏~2016年春(3/10以降、1.8年間)
2016年4月16日:熊本地震、M7.3、犠牲者258人。
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【ラ】2016年夏~2017年春(1年間)
【噴火】2017/04/20:西之島噴火
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【ラ】2021年秋~2023年冬(2月)
2023/02/06:トルコ・シリア地震、M7.4、犠牲者5万4千人以上
こんなに多いとは想定外で、目を疑った。
こうして見ると、ラニーニャ現象の終息直前が多い。
災害史に残るような多くの犠牲者が出た大地震などが並んでいる。
ただ、ユーラシア大陸などの内陸で起きる大地震が、果たして海洋現象の状況と関係があるということが、あるだろうか。
その点は、今後慎重に検討する必要がある。
だが、エルニーニョ現象、ラニーニャ現象、黒潮大蛇行といった海洋現象は、世界で起きる大地震の発生と密接に結びついていることが私のこれまでの研究でわかってきた。
そのようなことは、下記のAmazon Kindle書籍で公開している。
『地震と海の密接な関係: 大地震は海洋現象で予測できる【1】』
『世界の大地震発生の傾向: 大地震は海洋現象で予測できる【2】』
『南海トラフ巨大地震はいつ起きるか?: 大地震は海洋現象で予測できる【3】』
また、今年2月6日のトルコ・シリア地震の他に、トルコで大きな被害が出た大地震が2件も、ラニーニャ現象の終息直前に起きていたことも興味深い。
だが、前述のようにユーラシア大陸の内陸で起きた地震が果たして太平洋で起きる海洋現象と関係があるかどうかは慎重に検討したい。
今回の発見は、なぜこうなるのかは、今はまだ思いつかない。
何かしら相関性があるならば、非常に興味深いことではある。
※『南海トラフ巨大地震はいつ起きるか?: 大地震は海洋現象で予測できる【3】』