1つ前の記事で、今日発生した青森県東方沖の震源域で過去に発生した地震と海洋現象の関係を調べてみたが、今度は過去の福島県沖の大地震とエルニーニョ・ラニーニャ・黒潮大蛇行などの海洋現象の発生状況を調べたところ、明らかな相関性があった。
■福島県沖地震
福島県沖では、一昨年・昨年と2月・3月にM7以上の被害地震が起きた。
この震源域で起きる大地震と、ラニーニャ現象や黒潮大蛇行の発生状況には相関性があることが以前からわかっていたが、今回あらためて過去の大地震すべてを対象に調べてみた。
この震源域では、大きな地震が非常に多く起きている。
どのくらいかというと、ちょうど今日起きた青森県東方沖ではM6.0以上の地震が1919年以降に59回だったのに対して、福島県沖では同条件で113回も起きていた。
特に東日本大震災以降では、M7クラス以上の地震が2013年、2014年、2016年、2021年、2022年と5回も起きていた。
■福島県沖地震の傾向
以下に、過去に1919/01/01~2023/03/26に福島県沖で起きたM6.0以上の地震について集計した結果を示す。
全107件で、うち2011年3月の地震(東北地方太平洋沖地震の余震など)は除いている。
この月は3.11の余震が多数起きていて、データの偏りが生じるためだ。
1919/01/01~2021/12/31:福島県沖、M6.0以上
集計結果は、以下の通りとなった。
なお、「期待値」というのは、たとえばエルニーニョ現象が起きていた期間が全体の25%であることから、偶然に発生する確率を期待値としている。
回数 期待値 偏差
エルニーニョ期: 18 26 069% 少ない
ラニーニャ期 : 49 30 160% 非常に多い
EL通常期 : 40 21 190% 非常に多い
黒潮大蛇行期 : 57 39 160% 非常に多い
黒潮直進期 : 50 61 082% やや少ない
正IOD期 : 27 13 207% 非常に多い
負IOD期 : 05 10 020% 非常に少ない
IOOD通常期 : 75 16 469% 非常に多い
■顕著な傾向
まず、エルニーニョ・ラニーニャの発生中および通常期では、エルニーニョ期が少なく、ラニーニャ期が非常に多い。
また、現在は冬にラニーニャ現象が終わって通常期となったが、通常期も非常に多く起きていた。
次に、黒潮大蛇行の有無では、大蛇行期が非常に多い。
現在は2017年夏以降に黒潮大蛇行が発生している。
たとえば南海トラフなど、黒潮大蛇行が発生する周辺で地震の発生に影響を与えることは以前からわかっていたが、東日本沖の地震に影響を与える要因は、今のところはわからない。
また、IOD(インド洋ダイポールモード現象)の発生の有無では、正IOD発生中には非常に多く、負IOD発生中には非常に少なく、またどちらも起きていない通常期も非常に多いという偏りが出た。
IODは、ずっと遠方のインド洋で海面水温が平年よりも高くまたは低くなる現象で、日本周辺の気象に大きな影響を与えることがわかっているが、地震との関係は今のところ説明ができない。
このように、福島県沖で起きる大地震は、これらの海洋現象の発生と密接に関係していることがわかった。
このような情報を持ち合わせていない人々は、いざ大地震が起きれば慌てるだろうが、このような大地震発生の「傾向」の情報を少しでも持っていれば、今は大地震が起きやすい時期だと、心の備えもできるだろう。
今後は他にも大地震が頻発する震源域で、他のところも同様に調査して、地震予知・地震予測活動に活かせるようにしたい。
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