【地震防災】トルコ・シリア大地震~「世界の大きな被害地震ワースト10に迫る」を検証した~次の首都直下地震は?

2023/02/19

首都直下地震 被害地震 防災

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Forbesの記事で、トルコ・シリア大地震の犠牲者が過去の世界で「ワースト10」に迫るという内容があるが、実際に過去データを調べてみると日本の大地震も含めて意外な結果となった。

過去の日本で最大規模の関東大震災や近く発生する可能性が高い首都直下地震の被害想定も含めて、大地震の犠牲者数をあらためて検討してみた。


■トルコ大地震~被害地震ワースト10?

2/6に発生したトルコ・シリア大地震は、現在までに犠牲者が両国を合わせて46000人を超えているという。

WIkipedia日本語版では「2023年ガズィアンテプ地震」とされているが、まず日本人には呼びにくく覚えにくいので、別の名称で呼ばれるようになりそうだ。


2/9にForbes日本版Webに、「過去に世界を襲った大地震とその被害 トルコ地震、ワースト10に迫るおそれ」という記事が掲載された。


まだ地震発生の3日後の記事で、すでに10日経っているので、1万2000人を超えたという記述は前述のように大きく変わっている。

この記事で示す過去の世界の大地震の「ワースト10」は以下の通り。


1. 唐山地震(1976年7月28日、中国河北省、M7.8):65万5000人

中国の公式発表では24万2769人だが、実際ははるかに多かったと推定されている。


2. ハイチ地震(2010年1月12日、ポルトープランス、M7.0):31万6000人

数字は公式発表。もっと少なく22万人近くだったとする推定もある。


3. スマトラ島沖地震(2004年12月26日、インドネシア、インド領アンダマン諸島、M9.1):28万3000人


4. 四川地震(2008年5月12日、中国、M7.9):8万7600人


5. パキスタン地震(2005年、10月8日、M7.6):8万6000人


6. アンカシュ地震(1970年5月31日、ペルー、M7.9):7万人


7. マンジル・ルドバール地震(1990年6月20日、イラン、M7.4):5万人


8. バム地震(2003年12月26日、イラン、M6.6):3万4000人


9. アルメニア地震(1988年12月7日、スピタク、M6.8):2万5000人


10. グアテマラ地震(1976年2月4日、ロスアマテス、M7.6):2万3000人


■日本の大地震は?

これを見ると、日本で起きた大地震はワースト10に入っていない。

この理由の一つには、日本で発生する大地震の殆どは震源が海底である海溝型地震であり、今回のトルコのような内陸の直下型ほどは犠牲者が多くないこともある。

他の理由は、後述する。


次に、日本を含めた過去の世界の大地震で、犠牲者数が1万人以上の地震を国別に集計してみた。

集計は、私が保持するAD1年~2021年に起きた世界の大地震データを用いることにするが、抜けがあるかもしれず、完全なデータとは限らないので、あくまでも概要的なものと理解してください。


◎犠牲者1万人以上の地震 国別件数

・中国:15

・イラン:12

・日本:10

・トルコ:9

・イタリア:5

・シリア:4

・インドネシア:3

・インド:2

・エクアドル:2

・パキスタン:2

・アゼルバイジャン:1

・アルゼンチン:1

・アルメニア:1

・グアテマラ:1

・タジキスタン:1

・チリ:1

・ベネズエラ:1

・ハイチ:1

・ペルー:1


こうして見ると、上記のランキングではワースト10に入っていなかったが、犠牲者が1万人以上の大地震の回数では、中国・イランに次いで3番目に多い。

トルコは9件で、ほぼ日本と同じくらい起きていた。


■犠牲者数ワースト10

次に、Forbes記事では1950年以降の大地震だけで集計していたが、過去約2000年間に世界で起きた大地震データで憧憬して「ワースト10」を調べてみた。


◎犠牲者数ワースト10

01位:830000人、1556/01/23、中国陝西省、華県地震、M8.2

02位:323000人、1038/01/10、中国山西省、忻州地震、M7.3

03位:300000人、1737/10/12、インド・カルカッタ、

04位:260000人、0115/12/12、トルコ西部、アンティオキア、M7.5

05位:251000人、0526/05/31、トルコ西部、アンティオキア、M7.7

06位:242000人、1976/07/28、中国河北省、唐山地震、M7.5

07位:240000人、1920/12/16:中国寧夏、海原地震、M8.6

08位:230000人、1138/10/11、シリア北西部・アレッポ地震、M8.5

09位:227898人、2004/12/26、インドネシア・スマトラ島沖地震、M9.1

10位:220000人、2010/01/12、ハイチ南部・ハイチ地震、M7.0

16位:105385人、1923/09/01:日本・大正関東地震、M7.9、最大震度6


これを見ると、10位でも22万人もの犠牲者であり、今回のトルコ・シリア大地震の犠牲者数が今後これを抜く可能性は、あまり高くないだろう。


このような形で集計すると、日本で最多の犠牲者数だった大正関東地震(関東大震災)でも、16位にやっと出てくる。

それに比べて、トルコとシリアの大地震はワースト10に3件入っていた。


■日本が「ワースト10」にない訳

こういう調べ物をしていると、犠牲者数千人程度では「少ない方だな」という風に、感覚が麻痺してしまう。


フォーブスの記事では1950年以降の大地震に限定していて、その条件では過去に4件だけであり、たしかに今回のトルコ大地震が「ワースト10」に入りそうだということになる。


この地震大国の日本で、なぜワースト10の大地震がなかったか?

先ほどの続きを。


まず、10世紀以前に日本で発生した甚大な人的被害が出た大地震の殆どは、犠牲者数が「多数」とあるだけで、実数が全くわかっていない。

トルコなど中東や海外の国々では、もっとずっと昔に起きた大地震でも、かなり具体的な犠牲者数がわかっているものが多い。

穿った見方をすれば、日本あるあるで、国家が実際の数を国民に知られたくないといった理由?


過去の国内の観測史上最大の人的被害をもたらした内陸を震源とする地震は、1891/10/28の濃尾地震(M8.0、最大震度7相当)で、犠牲者・行方不明者が7,273人だった。


逆に、なぜトルコなど中東の大地震は大きな犠牲者が出るのか?

それは、基本は日本のような海溝型地震がなく、ほとんどの大地震は内陸の直下型地震のためということもあるだろう。


加えて、各所で報道されているように、トルコではまだまだ古い耐震基準による建物が多く、そのことも犠牲者数が桁違いに増える要因になっている。


■首都直下地震

東京都は昨年、首都直下地震の被害想定を10年ぶりに見直し、いずれも最大で犠牲者数がおよそ6150人、建物被害がおよそ19万4千棟に及ぶとしていたのを、2030年までに半減させる目標を立てた。


だが、現在の「6150人」でも、自分的には「ハッ?」と唖然とする数となっている。

「桁を間違えているのではないの?」と。


実際に首都直下地震が起きた後で、犠牲者数が想定と大幅に異なるので政府や都が叩かれるのが目に見えてくるようだ。

私がこれまで聞き知っていることとあまりにも違い過ぎると。



■災害周期

ここで、3.11以降の太陽黒点周期と大地震・火山噴火の発生の関係を示そうと思ったが、あまり時間がなくなってきたので後日に。

どうも、昨年のフンガトンガ・フンガハアパイの大規模海底噴火がトリガーとなって、これから起きそうな大きなことに繋がるような予感がしてきた。


2022/01/15:フンガトンガ・フンガハアパイの海底火山噴火(VEI5~6)。

2023/02/06:トルコ・シリア大地震、M7.8、犠牲者4万6千人+

2025/xx/xx:「2025年問題」(たつき諒さん)


この「2025年問題」までのブランク期間に、首都直下地震や南海トラフ巨大地震が起きたらもっと大変になるが、その可能性についてはより慎重に検討する必要がある。

南海トラフ巨大地震が「いつ頃起きそうか」については、既にAmazon Kindle本でまとめて世に問うている。



次は首都直下地震だが、それが「起きる前に」出さなければマズイと考えている。



※私が「バイブル」と仰ぐ故・池谷元伺名誉教授のこの著書は、数日後に私が絡む某誌で紹介されると本当に手が届かない価格になるかもしれず、予めてアラートを出しておく。








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ノンフィクションライター、地震前兆研究家、超常現象研究家、ブロガーの百瀬直也が地震・災害などを扱うWebサイト/ブログ。

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