4日前のNHK『災害列島』サイトの特集記事で「災害は夜間と休日に多いってほんと!? 調べてみると・・・」というのがあり、もし大地震発生の時間帯や曜日に偏りがあれば、防災観点から犠牲者を減らすために役立つだろうが、実際はどうだろうかと、過去の研究データも調べてみた。
■災害は夜間と休日に多い?
NHKの「災害列島」というWebサイトで、11/29に『災害は夜間と休日に多いってほんと!? 調べてみると・・・』と題した記事が掲載された。
「また土曜日に地震だ」とか「災害って夜に多い気がする…」というようなSNS上の投稿に、何らかの根拠があるのだろうか。
この記事では、過去に発生した災害の日付や時間などを詳しく調べた結果が書かれている。
ここでは地震と大雨に関して調べているが、今回は地震だけに絞って検討してみる。
この記事では、気象庁の「震度データベース検索」で、過去約20年間(2002年11月~2022年11月15日)に発生した震度5弱以上の揺れを伴う地震289件を対象としている。
■多い曜日と時間帯
その結果、まず発生の曜日では、下記のグラフの通りとなった。
最も多いのは土曜日の68回で、最も少ないのは火曜日となった。
そもそも曜日というのは人間が懇意的に決めた概念で、それに沿って地震が起きたり起きなかったりするとは考えにくい。
それで、この方よりはどこから来るのだろうかと考えてみると、たとえば最大震度7くらいの大地震が起きたとして、その余震が同日に集中して起きていたということは、あるかもしれない。
■「震度」のくくりに意味があるか?
私はいつも考えていることだが、日本独特の「最大震度」による表現は、地震の規模を考慮する際には、絶対的な指標ではない。
国際的に利用されている、地震の規模の絶対的指標である「マグニチュード」を優先的に公開すべきだと思うのだ。
地震が発生した時の報道で、いつも真っ先に知りたいと思うのは、震度よりも「M6.0」といった本当の地震規模だ。
そのため、私は常に「震度」のくくりで集計することはなく、「マグニチュード」の基準でデータ解析することにしている。
■地震が多い曜日?
次に、自分が持っている過去の地震データを用いて集計してみた。
まず、1919/01/01~2021/12/31に国内で発生したM6.5以上の地震617件を発生の曜日ごとに集計すると、以下のようになった。
ただし、東北地方太平洋沖地震の同日に起きた多数の余震だけは、除いてある。
あまり大きな差異はないが、それでも火曜日に最も多く、木曜日に最も少ないという結果となった。
次に、より大規模の地震だけに絞って集計してみる。
1919/01/01~2021/12/31に国内で発生したM7.0以上の海溝型地震185件を集計すると、下記のようになる。
ここでも、火曜日に最も多く、木曜日に最も少ない結果となった。
NHKの集計で、火曜日は最も少ないのと対照的だ。
偶然の結果としては、火曜日が木曜日の2倍以上多いのは、なぜこうなるのか理由がわからない。
いずれにしても、NHKでも私のデータでも、このくらいの偏りは偶然の結果によるものかもしれない。
■地震が多い時間帯
次に、NHKが集計している、震度5弱以上の地震の時間帯別の集計結果について。
下記のような結果となっている。
これを見ると、23時台に飛び抜けて多い。
これに対して、私の曜日の集計で用いたデータでは、まずM6.5以上の地震を集計すると、以下のようになる。
これを見ると、NHKのデータと同様に23時台が35件と多いが、11時台も同数になっている。
次に、M7.0以上の海溝型地震の場合では、以下のようになる。
こちらでは、12時台が13件と最も多く、11時台が12件、23時台が11件と、あまり変わらない。
このあたりは、私が過去に調査した結果と大きく変わらない。
正午前後と、午前0時前後に集中する結果となるのだ。
■発生時間帯
では、NHKの記事では、このあたりの時間帯の偏りについて、どう解釈しているだろうか。
地震の専門家に取材したところ、確かに夜に地震が多いと思っていたという。
だが、特定の時間帯や曜日に地震が起きやすい理由があるかというと、これは「偶然」だと答えている。
私はこの意見を、はいそうですかと承諾しかねる。
というのも、地震発生の時間帯に関する海外の研究を調べると、地震の発生時刻は夜間に偏りがあるという研究結果が目立つのだ。
たとえば、インドのバーバ原子力研究センター(BARC)では、月が地球に接近した時(近地点)、あるいは満月の前後に地震の発生数が顕著に増加することがわかった。
同センターの研究者によると、月の近地点と満月が重なる時には、地震の発生数は6倍にも上昇したという。
この2つの条件が重なるというのは、いわゆるスーパームーンと呼ばれる時期のことだ。
地震の発生時刻については、日中に減少し、午後3時から午後4時に最小となり、その後は深夜まで次第に上昇するという。
正午前後には小さなピークが現れる。
NASA・SETI研究所の研究でも、世界のどこの地域でも、地震の発生は夜中に多く日中は少なくなる傾向があるという結果が出ている。
やはり「偶然」ではなさそうだと思えてくるのだ。
国内の地震学者諸氏が認めないのは、単に現在の国内でそのような研究があまり為されていないのではないのだろうか。
■就寝中の地震
実際に夜間に大地震が多くても、やはり「偶然」だったとしても、就寝中に大地震に襲われることが防災観点上からは危険度が高くなる。
早朝5:46に発生した阪神・淡路大震災では、亡くなられた方々のほとんどは、家屋の倒壊や家具などの転倒により命を失った例だった。
そのため、いつ地震が起きても生存できるような備えは重要だろう。
うちの場合は、寝室に倒れると命を奪われるような高い家具を置かないという鉄則は守っている。
申し訳程度の「突っ張り棒」をあまり頼りにしていては、いわゆる「正常性バイアス」に捉われて、助かる命も助からなくなってしまうかもしれない。