3日前に東京新聞で、スルーできない研究内容が報道された。
30年以内に南海トラフ沿いで巨大地震が発生する確率を「70〜80%」としている政府の地震調査委員会の地震予測の根拠に疑問を持つ科学者が、学会でその旨を発表する。
■予測確率に疑義
9/11に東京新聞で報道されたのは、下記の記事。
『南海トラフ地震 30年以内の発生確率「70~80%」に疑義 備えの必要性変わらないけど…再検討不可欠』
30年以内に南海トラフ沿いで巨大地震が発生する確率を、政府の地震調査委員会が「70〜80%」としている。
だが、その確率算出の根拠となっている高知県室戸市の室津港の地盤隆起の変化が、地震活動によるものではなく、江戸時代の港湾工事による可能性のあるという。
そのことが、東京新聞と東京電機大の橋本学特任教授(地震学)らの調査で分かった。
■「70~80%」の根拠
そもそも70〜80%という確率は、1980年に遡る。
島崎邦彦東京大名誉教授(地震学)らが提唱した「時間予測モデル」を使って算出され、次の地震を2030年代中ごろと予測している。
このモデルは、地震で地面が大きく隆起すれば、地震のエネルギーが多く放出され、次の地震のエネルギーを蓄えるために時間がかかるという仮説に基づく。
江戸―昭和初期の史料に記載された、室津港の隆起による海底の深さの変化の測量記録から、次の地震発生時期を予測している。
ところが、この根拠が怪しくなってきた。
この頃、室津港で毎年のように工事が繰り返されていた。
そのことで、人工的に港の深さが変えられた可能性が強く、予測の基となるデータとして室津港の測量値は不適切な可能性が出てきたという。
■熊本地震で騙された?
以上のことが、政府の地震調査委員会の「70〜80%」という予測にどう影響を与えるかわからない。
この報道では、今後の可能性として、20%程度に落ちる可能性もあるという。
だが、それ以前に私は元SEとして、このような確率の算出というものを、あまり信用していない。
この記事にあるように、2016年に熊本地震が起きる前には、南海トラフ地震に比べて発生確率が低いと熊本県は宣伝し、企業を誘致していた。
もちろん、そのことで熊本県を責めるつもりはなく、問題は地震発生確率を「信用しすぎてはいけない」ということだ。
たとえ80%でも20%でも、起きる時には起きる。
全く起きなくなるわけはない。
熊本地震の際には、確率が低く見える地域に油断が生まれ、被害を拡大させた可能性があると手厳しい。
だが、それが全くないとは言えない。
■「次は南海トラフ」とは限らない
そもそも、「次は南海トラフ」などとは誰も言っていない。
最初に南関東直下で大きく揺れるかもしれないし、富士山噴火かもしれない。
これら3つは、過去の一つの「大災害シリーズ」の期間中に連続して起きていたことが多い。
いつ来るか、いつ来るかと怯えて過ごすよりも、たとえば大津波の被害がない土地へ移住する。
その時間的余裕は、今ならばまだあるかもしれない。
「今すぐに起きそうだ」と心の内でも思っていれば、こんなことは書かない。
現在、最重要テーマとしている「海洋現象と大地震の発生の相関性」については、いま執筆中のAmazon Kindlde本シリーズを執筆しているうちに、執筆前よりもかなり自信がもててきた部分がある。
国や地域を絞って集計すると、驚くほど顕著な傾向を得ることもある。
正に今日がそうだった。
現在、シリーズ2冊目を書き上げて、近日中に発行する予定だ。
次の執筆は、いよいよ『南海トラフ巨大地震はいつ起きるか?』になる。
その次は『首都直下地震はいつ起きるか?』