東京都は、首都直下地震の被害想定を10年ぶりに見直して、その結果、犠牲者数が少なくなったなど、これまでの被害想定と異なる部分が出てきた。
犠牲者数が減ったことは納得できる部分もあるが、そうでない部分もある。
■首都直下地震の被害想定見直し
東京都は5/25に防災会議を開き、首都直下地震が起きた場合の被害想定を10年ぶりに見直した。
想定したのは、首都機能や交通網に大きな影響を及ぼす「都心南部直下地震」のほか、島しょ部への津波の影響が大きい南海トラフの巨大地震など8つの地震について。
最も大きな被害が想定されたのは、冬の午後6時に風速8メートルの中「都心南部直下地震」がマグニチュード7.3で起きた場合となった。
この想定では、揺れによる建物倒壊で約3200人、火災で約2500人が亡くなるなどとなった。
これは、建物の耐震化が進んだことなどで、犠牲者がおよそ6150人と、前回の想定より3割余り少なくなったということ。
被害想定の変化は、下記の表でまとめてある。
■どこまでリアルか?
犠牲者数が減ったからといって、「あ、そんなもんか…」と安心してはいけない。
それでも、300万人ほどが避難を余儀なくされる。
負傷者は9万人あまりで、建物被害は19万棟以上。
つまり、首都圏は滅茶苦茶になる。
また、犠牲者数もあくまでも机上の空論…とまでは言わないが、所詮は机上の議論による結果であり、どこまで実情に近づいているのかなどは、起きてみないと誰にもわからない。
建物の耐震化が進んだ結果として、倒壊の被害などが減ることは、ある程度は納得できる。
都心の高層ビルほど、地下への杭打ちはしっかりしていて倒壊の恐れは低く、むしろそれより低層で建築年数が経っているビルの方が心配だ。
■同時多発火災
関東大震災(1923/09/01、M7.9)の際には、東京・横濱を中心に火災に見舞われ、犠牲者約10万5千人、全潰全焼流出家屋約29万棟という途方もない被害が生じた。
これは、よく知られているように、「火災旋風」が生じたことも一因としてある。
今回の想定でも、住宅や事業所で火気や電気を使う器具から出火し「同時多発火災」が発生して鎮火までに丸一日以上かかると想定されている。
■沿道の建物倒壊
また、緊急車両の通行の確保が必要な「緊急輸送道路」でも、一部で沿道の建物が断続的に倒壊するなどしておよそ40%の区間で時速20キロ以下の渋滞になるとしている。
以前に知り合いの建設エンジニアが、こう語っていた。
「首都高の都心部分は地盤の弱い河川の上を走っているため、地震の規模によっては全壊することも考えられる」
正直いって、このようなレベルまで「想定」がされていないのが実情だろう。
そういうことまで考えると、「本当に6150人程度で終るのか?」と考える人々がいれば、それは真っ当な感想かもしれない。
このあたりはブログやTOCANAで何度も書いているが、さまざまな「想定外」が待ち受けているように思えるのだ。