阪神・淡路大震災から27周年に合わせた短期連載の5回目の最終回は、大震災の被害状況と、地震の前に様々な前兆現象があったことを紹介する。
連載1回目から読みたい方は、こちらにある。
これまでの4回で書いてきたことは、地盤の強弱や建物の強度についてのことで、長期的に大地震に備えることばかりだった。
だが、日本の政府は基本的に地震予知は不可能としていて、いつ頃どこで地震が起きるのかが、まったくわからない。
だが、実際はさまざまな前兆現象が起きていたのだ。
※この記事は、2015/01/17の阪神・淡路大震災20周年の日に、旧はてなブログに掲載した記事をリライトしたものです。
■地震研究のきっかけ
こういう領域になると、地震前兆研究家を名乗る自分の研究成果を最も活かせる。
2004年12月26日にスマトラ島沖地震・津波が起きたときに、ちょうど1週間前に海沿いの地でビルが倒壊する大地震の予知夢を見ていたにもかかわらず、何もできなかったことに非常に落胆した。
そして、日本での地震災害の被害を少しでも減らすために、自分に何ができるかを自問した。
その結果が、いまやっているような研究および情報活動だ。
連載1回目で書いたように、私はあの時に日本を離れてジャワ島でSEとして働いていて、詳しい状況や生々しい映像がまったく入ってこなかった。
それで、情報の欠如を埋めるべく、ブックオフで大震災関連の本を見つけた時には、なるべく買うようにした。
■地元プロ野球球団の優勝は偶然か?
あの大震災の年(1995年)の秋に、プロ薬球では地元神戸を本拠地とするオリックス・ブルーウエーブがリーグ優勝した。
このことは、たんなる偶然なのだろうか?
いや、そんなことは決してないだろうと思う。
そして、ちょっと調べただけでも、その自分の考えを裏付けるような情報に行き当たる。
大震災後に、宮内オーナーは「こんなとき神戸を逃げ出して何が市民球団だ。一人も来なくてもいいから、スケジュール通り絶対、神戸でやれ」と神戸での開催を主張した。
そしてチームは「がんばろうKOBE」を合言葉に、4月からのシーズンに臨んだ。
「がんばろうKOBE」というサイトのトップに、当時の仰木監督(故人)の回想記がある。
仰木監督といえば、イチローを育てた名監督だ。
その仰木氏のコメントの一部を、以下に引用する。
コンディションは最悪だった。優勝できたことが不思議なぐらい。当時はおとなしい子ばかりで頼りなかった。それが気持ち一つで変わる。人間の瀬戸際の強さを感じた。 プロ野球選手が気持ちを一つにするなんてなかなか難しいこと。復興への思いが団結心を生んだ。すごいと思った。みなさんから「元気づけられた」と言われたが、逆だった。神戸で試合をしていなければ、絶対にリーグ優勝はなかった。
使命感があったのだと思う。普通、優勝は球団のためであり、選手のためのもの。影響を及ぼす範囲は小さい。だが、95年は社会的意義があった。通常の通念とはまるで違った。
(仰木彬(1935-2005)、2005年の神戸新聞の取材より)
住民が一体となって、「がんばろう!」という気持ちが優勝に導いたといえるだろう。
思わず涙が出てくるようなエピソードだ。
個々の人間は弱くても、多くの人間が団結すれば、すごいことが起きる。
そういうことも、震災から得た一つの「学び」ではないかと思う。
上記のような感動的な逸話があったものの、大地震というのは起きないに越したことはない。
いや、起きるのは自然の摂理で仕方ないとしても、事前に少しでも情報が行き渡っていれば、犠牲者を減らすことはできただろう。
27年経った今、再度考えてみると、やはりオリックス球団の優勝は偶然のことではなかったのではないか。
そう思う理由の一つとして、2011年の東日本大震災が起きた年の、6月26日~7月17日に、ドイツで開催された2011 FIFA女子ワールドカップで、「なでしこジャパン」が初優勝したことがある。
「天が味方する」ということは、やはりあるのではないか。
■阪神・淡路大震災の特設サイト
今日、ネット上を散策すると、大震災20周年ということで、いろいろなところで特設サイトができている。
こちらは、神戸新聞社の特設サイト。
デジタルマップほか、さまざまな資料がある。
(SSL化されていないので注意を)
過去の連載で紹介した、「1.17の記録」サイト。
神戸市が無償で提供する1000枚ほどの写真を閲覧・利用できる。
(SSL化されていないので注意を)
気象庁の特設サイト。
科学的な資料などがある。
(SSL化されていないので注意を)
◎1995 阪神・淡路大震災
こちらは、震災翌日1月18日のNHKのお昼のニュースのYouTube動画(既に削除された)。
日本にいなかった私にとっては、衝撃の映像だ。
ポートアイランドでは高層住宅がまったく倒壊しなかったのは、それなりの地盤強化をしていたからだろう。
埋立地特有の液状化現象は起きていたようだが。
東灘区ではガスタンクからLPガスが漏れ周辺住民が避難した。
47分ぐらいあるが、被災した住民の生々しい声もあり、非常に貴重な映像だ。
阪神高速道路の橋桁倒壊の様子も映されている。
DVDに焼いて永久保存したいくらいの、重要な映像だ。
いまNHKで震災のドラマをやっているが、こういうものよりも当時の大震災時の映像を見せてほしいと思う。
上記の動画にも映っているが、避難所となった学校での光景が無神経に撮られていく。
同じ学校の一部の部屋は、置き場所になっている。
3日と耐えられずに避難所を出た人々も多いようだ。
というか、避難所があるだけまだ良いかもしれない。
東京都で万単位で避難民が発生した場合、どうなってしまうのだろうか?
そういうことは、細部まで詰めて検討されていないのではないかと不安になってくる。
仮設住宅を建てる土地が、どれだけあるか。
阪神・淡路大震災の時でさえ、不便な土地に建てられた仮設住宅に入ることを希望する人々は少なかった。
首都機能が麻痺したら、政治も経済も含めて、日本全体が正常に機能しなくなる。
その理由もあって、私は首都移転に賛成している。
被災地泥棒や犯罪も多発して、無法地帯と化してしまうことにならないだろうか。
決して大げさな表現ではなく、復興費用だけで日本経済は破綻するかもしれない。
日本の民放は、こういう時には駄目だ。
視聴率命で、それが出資元(スポンサー)の意向であって、中身は二の次で、お笑いタレントなど視聴率を稼いでくれる人々による番組ばかりになってしまう。
これは「お金がすべて」という今の日本の社会の縮図でもあるから、仕方がないのかもしれないが。
テレビを「神」にしてしまった国民のせいでもある。
原発の真実を流せないのも根は同じで、広告屋が原子力村の中枢にいるからだ。
物質的に豊かになることで本当の「幸福」が得られるわけではない。
このような大震災を体験して、実感することではないか。
「辛い時期も共有できる家族がいること」とか「健康であること」とか、この世を去らずに「生きていること」の方が、ずっと大切だ。
仮設住宅や復興住宅での、お年寄りたちが孤独の中で逝去することも、痛切な問題だ。
生の終わりは全ての終わりと思っている人々にとって、突然に訪れる終わりは、パニックを引き起こすもの以外の何物でもない。
これに対して、「信仰」をもっている人や「永遠の生命」を信じる人々は強い。
私自身も、もうその道しか残されていないと悟ったら、諦めの境地になれるだろう。
その自信はある。
それがすべての終わりではないと、10代の頃から考えていた。
それは「盲信」ではなく、50年近い「学習」と「探求」の結果に辿り着いたものだった。
◎記録映像で振り返る阪神・淡路大震災
次に、この映像も紹介しておかなければならない。
神戸市広報課職員が阪神・淡路大震災発災直後から撮影し続けた記録映像に、撮影者本人のインタビューを交えて編集した動画。
「なんちゅうことや、これ。須磨が、長田が、むちゃくちゃになっておる!」
撮影担当の職員が、思わず悲痛な叫びを混じえて報告した映像。
記録映像で振り返る阪神・淡路大震災 - YouTube
■前兆現象
大地震の犠牲者を減らすためには、やはり「地震予知」だろう。
だが、現在の科学では、それも難しい。
いや、技術云々の話ではなく、ただ努力しないだけだという声もある。
私はこれまで個人的に収集した情報や研究内容を総合すれば、やはり前兆現象は「ある」という方向に、かなり傾いている。
たとえば1.17や3.11が「人工地震」であると主張する人々にとっては、前兆現象など「あってはまずい」ものかもしれない。
だが、実際には、あると考えなければ成り立たないというのが、この十数年間ほど探求を続けてきて思うことだ。
ここまで書いて、今回は前述の特設サイトや動画を見たりしていて、「前兆」について詳しく書く前に今日が終わってしまいそうだ。
阪神・淡路大震災の前兆現象をまとめた本としては、「前兆証言1519!」(東京出版)がある。
絶版になっているが、これが第一級の資料だ。
いまはもう大型本の方は、最低5千円位の本が数冊しか残っていない。
この本は、弘原海(わだつみ)清氏(故人)が呼びかけ、FAXなどによって集められた情報をまとめたもの。
1519件の報告のうち、重複した内容や前兆とは無関係なものなどを除き、最終的に1207件の証言としてまとめられた。
これらは報告をそのまま記した生の情報であり、中には非科学的なものや迷信的と思えるものもある。
本当に前兆現象といえるものかどうかは、読む人の判断に委ねられている。
前兆現象研究家として、私は日頃から、動物の異常行動のデータ収集や研究に力を入れている。
動物の良いところは、「思い込み」や「嘘」がないことだろう。
これに対して人間は、怪しい情報でも自分の頭で考えたり裏を取ることをせずに、騒ぐ人々が少なくない。
それは「地震雲」などでも言えることだ。
気象現象として説明できるものか、または本当に地震前兆によるものかは、よほど気象などの十分な知識がある人でないと判断が難しい(自分も含めて)。
地震雲でも動物前兆でも他の要因にしても、一つだけの情報で判断せず、複数の要因によって判断することが重要だろう。
自分自身の過去の失敗を鑑みても、そう思うのだ。
この本の前兆証言は、以下の種類に分類されている。
・空と大気の異常(地震雲、夕焼け、虹など)
・大地の変化(井戸水、温泉、地鳴りなど)
・人間(夢、耳鳴りなど)
・獣類(イヌ、ネコなど)
・鳥類
・魚類
・爬虫類など
・昆虫など
・植物
・その他
「その他」の中には、電気製品の異常などが含まれるが、全体の中では非常に数が少ない。
10年後の今だったら、また別の形の報告が多くなっただろう。
今はもっとネット上での情報が広まっているから、たとえばスマホの電波の異常とかも増えるだろう。
もっとも、何でもかんでも地震の前触れかとか思う人が多いので、もっと前提知識が広まれば良いと思う。
それをやるのが私の役目の一つなのかもしれないが。
■参考になる書籍
この記事で詳しい前兆現象の紹介をする余裕がなくなった分、重要な情報が得られる本を紹介することにしたい。
在庫や古書が何冊とかあるのは、すべて今日時点でのAmazonでの話だ。
絶版のものが多いが、古書で入手可能だ。
◎「大地震の前兆現象」(弘海原清、河出書房新社)
こちらは、「前兆証言1519!」のエッセンス版とでもいうかな。
故弘海原氏が「前兆証言」データを解析して、わかったことを一般向けにわかりやすく書いている。
「前兆証言1519!」を買えなかった人にも、持っている人にも、お薦めです。
こちらは新本が現時点で2冊在庫があり、また古書も1円から十数冊あって、今のところは高くないです。
◎「阪神大震災・瞬間証言」(岡井燿毅、朝日新聞社)
作者: 岡井燿毅,浜口タカシ,照井四郎
出版社/メーカー: 朝日新聞社
カラー/モノクロのグラビア写真を満載したハードカバーの保存版。
写真と共に被災者の証言を散りばめている。
たまたま以前にブックオフで見つけた買ったもの。
Amazonでも写真がなかったので、Instagramに投稿した。
◎神戸・心の復興―何が必要なのか
作者: NHK神戸放送局
出版社/メーカー: 日本放送出版協会
発売日: 1999/01
「神戸・心の復興―何が必要なのか」(NHK神戸放送局、NHK出版)
震災3年後に、建物や交通は8割復興したといわれるが、被災した人々の心は本当に癒されたのか。
1万人アンケートとその後の追加取材により、人生を再建する人々の姿を追う。
仮設住宅や復興住宅に住む人々が、何を望んでいるのか、何が不満なのか、そのあたりが本人たちの生の声によってよくわかる。
首都直下地震後の東京の姿をイメージして、いろいろ考えさせられた。
◎〈完全図解〉大地震で壊れる町、壊れない町―全国「被害予測データ」最新版!
別冊宝島Real (031)
出版社/メーカー: 宝島社
発売日: 2002/04
メディア: ムック
◎「これ一冊で大丈夫! 本当に使える地震対策マニュアル 」
(別冊宝島1866、2012年)
東日本大震災以降に出版されたもので、主に首都圏の地震災害を想定した本。
この連載で紹介したような、首都圏で地震で危険な地域、建物崩壊・液状化が危ない地域のハザードマップもある。
「地名から読み解く危険地帯」や防災対策など、簡潔にまとめられている。
◎親子のための地震安全マニュアル―家庭で備える地震対策最新情報!
作者: インパクト
出版社/メーカー: 日本出版社
発売日: 2005/11
2005年出版の本だが、2011年の東日本大震災を受けて改訂されたもの。
大地震の防災や、実際に地震が起きた時にどうするか、被災した時にどうするかなどの情報が、わかりやすく書かれている。
◎予言・天変地異―その日に備えよ! (DIA COLLECTION)
出版社/メーカー: ダイアプレス
発売日: 2014/07/04
メディア: ムック
私が企画・執筆(共著)したムック。
上記の「大地震の前兆集」で紹介した動物の異常行動についても10ページ以上にわたり紹介している他、電気製品の異常など宏観異常現象などについても書いている。
■最後に
こうして見ていくと、科学技術が発達したはずの日本でも、地震や津波や台風や洪水などの自然災害による被害が減ることはない。
だが、これらの災害から「学習」することは少なくないはず。
生命を無駄にしないためにも、それは必須のことだろう。
都市部の人々が大震災から学べることは、「助け合う精神」だろう。
自分だけ、あるいは自分たちだけ助かろうというのは、精神的に成長した人間のあるべき姿ではない。
災害の時には、必ず多くの人々に助けられているはず。
東京に住む人間にとって、「明日は我が身」だ。
そのことを、肝に銘じておかなければならない。
東日本大震災では、犠牲者の多くは津波による被災者だった。
当たり前のことだが、津波の被害を受けるのは、基本的に海辺に住む人々だ。
海辺とはいっても、海岸線から数キロも範囲内になるかもしれず、または川を遡上することも頭に入れておかなければならない。
そうではない内陸に住む人々にとっては、地震自体による被害に備えなければならない。
大都市での大地震という意味では、神戸地震から学ぶことは多いはずだ。
もっとも、東京は神戸以上に地盤が弱く(特に23区の東側)、ビルや住宅が密集していて、極めて多くの「想定外」が起きることは、目に見えている。
いくら役人たちが机の上で検討してみたところで、漏れてしまう想定は絶対あるはずだ。
というか、人間の想像の範囲を遥かに超えている事態が。
いま阪神・淡路20周年で情報が集約している間に、頭に叩き込んでください。
東京では、「それ以上」のことが起きる可能性も含めて。
■【追記】2015/01/18
いま、日本テレビの「バンキシャ!」という番組を見るともなしに見ていたら、阪神淡路大震災の直後に取材された映像が映された。
全壊した民家の前で、男性が呆然と立ち尽くす。
そこへ従兄弟の男性がバイクに乗って来て、男性の母が家に潰されて亡くなったことを知らせた。
その従兄弟の男性は、その民家の隣で寝ていて、地震に遭遇した。
自分と妻は子供に覆いかぶさるようにして、なんとか助かった。
だが、その脇に寝ていた女の赤ちゃんは、堕ちてきた仏壇の下敷きになってしまった。
3人がなんとか脱出した後、父だけが娘を助け出そうと家に戻る。
仏壇をどけてみると、その下には、なんと娘がほぼ無傷で息をしていた。
たまたま仏壇の扉が両開きになっていたため、赤ちゃんは落ちてきた仏壇の中にすっぽり収まって助かったのだ。
その娘は、20年たったいま、結婚して子供もいる。
その時に顔にできた傷は、今はすっかりなくなっていた。
こういうとき、人は「運が良かった」と言うが、ご先祖様に助けられたのかもしれないと私は思う。
神さま仏さまとは違い、ご先祖様は願い事をする対象ではない。
だが、いつも仏壇に手を合わせて感謝の念を捧げていれば、イザという時に助けてくれることもあるのではないか。
感動的な話だった。
※Amazonで「備蓄食料」で検索して出てきた、超ベストセラー。
※こういうのも、非常食としても結構良いかも。
とにかく野菜はすごく貴重な食料になるでしょう。
【今日の食卓】西友で200円弱で買った「ラーメンの具」。乾燥した人参、コーン、真昆布、わかめ。カルシウムを補うにも良い。Mix vegetable for instant noodle.